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ハイブッシュブルーベリーについて

ハイブッシュブルーベリーの概要

ハイブッシュブルーベリーイメージ画像ブルーベリーにはいくつか種類があり、日本では主にハイブッシュブルーベリーとラビットアイブルーベリーが栽培されています。いずれもアメリカ原産のブルーベリーですが、ハイブッシュブルーベリーはラビットアイブルーベリーよりも休眠打破に必要な低温要求量が多く(秋〜冬季にある一定量の低温に晒されないと、翌春、正常に発育しない)、耐寒性が強いです。これらの特性から、日本では主に関東以北でハイブッシュブルーベリーが栽培されています。しかし、ハイブッシュブルーベリーの土壌適応性はラビットアイブルーベリーよりも狭いため、土壌条件を吟味し、適切な土壌改良後に植栽する必要があります。 また、ハイブッシュブルーベリーにはノーザン(北部)ハイブッシュブルーベリー、ハーフハイ(半樹高)ハイブッシュブルーベリーおよびサザン(南部)ハイブッシュブルーベリーの3種があります。 ノーザンハイブッシュブルーベリー(以下、ノーザンハイブッシュ)は低温要求量が多いため、栽培適地はリンゴまたはモモの栽培地帯と同じで、日本では北海道中部から東北、関東甲信越、北陸から中国山地、九州の高冷地になります。ハーフハイハイブッシュブルーベリーは耐寒性が強いため北海道北部でも栽培可能です。サザンハイブッシュブルーベリー(以下、サザンハイブッシュ)はノーザンハイブッシュの栽培が困難な冬季も温暖な地域で栽培されています。また、サザンハイブッシュは耐寒性が弱いため、寒冷地で栽培した場合は凍害が多発する可能性があります。 このように、ハイブッシュブルーベリーでも種により低温要求量や耐寒性が異なるため、栽培地の気象条件に適したブルーベリーを選択することが重要です。

ハイブッシュブルーベリーの栽培特性

適正土壌

ハイブッシュブルーベリーの適性土壌イメージ画像ハイブッシュブルーベリーの栽培は、根が浅根性であることから、地下水位は50cm前後が適正で、粘土質が少なく、砂を多く含む土壌で適しています。また、排水性が良く、通気性の高い土壌を好むので、水田転換園では、暗渠や高畝にして植え付けるなどの対策が、その後の生育に大きく影響します。さらに、ブルーベリーは好酸性植物であり、その生育は土壌pH4.3〜4.8の範囲で好適とされています。そのため、植え付け前に硫黄粉による土壌pHの調整を行います。このように、植え付けの前に自園地土壌の土壌pH、土性、地下水位などを確認することが重要です。


剪定方法

剪定は冬季に行いますが、凍害発生の危険のある地域では、凍害発生危険時期以降に凍害程度を確認してから行います。主軸枝を数本配置し、杯状の樹形を作ります(図1、図2)。樹幹内部に空間を作り、樹全体に日が当たるようにします。内向きの枝や前年枝の直上、直下の枝は切ります。新梢の伸びが悪い主軸枝は切り落とし、別の若い枝を主軸枝候補として育て、樹の若返りを図ります。主軸枝を定期的に更新し、樹勢の維持に努めることが重要です。収量は花芽数に影響されます。しかし、花芽数が多過ぎると果実間で養分競合が生じ、樹に対する負担も大きく、それは樹勢衰弱につながります。したがって、剪定時に結果枝を間引き、さらに残された結果枝の花芽数も1/2〜1/3程度に減らします(図3)。これにより、無剪定の場合よりも収量はある程度減少しますが、果実が大きくなり、安定した果実生産が可能になります。

ハイブッシュブルーベリー 図1 剪定前(‘Blueray’)イメージ画像
図1 剪定前(‘Blueray’)
ハイブッシュブルーベリー 図2 剪定後(‘Blueray’)イメージ画像
図2 剪定後(‘Blueray’)
ハイブッシュブルーベリー 図3 結果枝の花芽切り詰め前(左)、後(右) イメージ画像
図3 結果枝の花芽切り詰め前(左)、後(右)

土壌管理

乾燥防止、有機物補給、雑草防止等を主な目的として有機物マルチ法による土壌管理を行います。特に根域群が浅いハイブッシュブルーベリーでは重要な管理技術です。マルチ資材として、肥料分が少なく、分解の遅いものが適しており、一般に針葉樹バーク(樹皮)、木材チップ、もみがら、刈り草等が用いられます(図4)。10〜15cm程度の厚さで施し、分解した分を数年おきに補給します。

ハイブッシュブルーベリー 図4 バークによる樹列マルチ イメージ画像
図4 バークによる樹列マルチ

結実

ハイブッシュブルーベリーは訪花昆虫により受粉されますが、自家受粉(同一品種の花粉で受粉)および他家受粉(他品種の花粉で受粉)で結実します。果実の種子には褐色の大型種子と白色の小型種子があり(図5)、褐色大型種子が多く含まれる果実は肥大が優れます。また、自家受粉よりも他家受粉で褐色大型種子が増加します。したがって、2品種以上を混植した方が、大きな果実を生産することができます。

ハイブッシュブルーベリー 図5 ブルーベリーの種子 イメージ画像
図5 ブルーベリーの種子

施肥

窒素形態にはいくつか種類があり、ブルーベリーはアンモニア態窒素や尿素系窒素を好みますので、施肥する時には注意する必要があります。また、マグネシウムや鉄の欠乏症が発生しやすいので、窒素、リン酸、カリウムの他にマグネシウム、鉄などの微量要素の施肥も重要になります。施肥の時期は、萌芽前、結実後および果実の着色開始前とします。また、果実収穫後に礼肥を与える場合もありますが、凍害多発地帯では、2次伸長、または3次伸長を助長しないように注意する必要があります。

生理障害

マグネシウムおよび鉄欠乏では、葉脈間クロロシス(退緑)を呈します。マグネシウム欠乏の症状は新梢の下位葉に現れ葉の中央部にクリスマスツリー状に緑色が残ります。一方、鉄欠乏の症状は新梢の若葉に現れ、主脈や側脈には緑色が残ります。土壌中のカリウムが過剰な場合、マグネシウムの吸収が抑制され、マグネシウム欠乏が生じやすく、土壌pHが高い場合、鉄欠乏が生じやすくなります。生理障害の原因を正確に判断するためには、土壌分析、葉養分分析が必要になります。

収穫期間

開花〜収穫までの日数は60〜90日程度です。果実がある程度発育した後、一旦、肥大が停滞または緩やかになる時期があります。その後、成熟期に入ると急激に着色や肥大が進み、同時に果実の軟化、糖度の増加と酸の減少がみられます。しかし、果実の成熟は斉一ではないので、果実全体が濃青色になり、果梗着生部まで十分に着色した果実から順次収穫します(図6)。収穫時期が早いと酸味が強く、遅れると過熟になり、食味だけでなく日持ち性も低下しますので、収穫時期の見極めがとても重要です。ブルーベリー果実は柔らかく、果梗着生部の果肉が露出し、収穫時の果実温も高いことから、日持ち性は優れません。収穫後の果実の貯蔵期間は冷蔵で1週間程度です。

ハイブッシュブルーベリー 図6 成熟前果実(左)と完熟果実(右) イメージ画像
図6 成熟前果実(左)と完熟果実(右)

果実の品質

果実の大きさは平均で2〜3gですが、果房内で最初に収穫される果実が大きく、収穫時期が遅い果実ほど小さくなる傾向があります。糖度は8〜15%で、主要な糖は果糖とブドウ糖です。酸含量は1%前後で、その大部分がクエン酸です。果実表面には果粉(ブルーム)があり、品種によりその量は異なります。果粉は果実自体から生成され、果実の水分蒸発防止等の働きがあり、果粉の取れてしまった果実は日持ちしません。したがって、収穫作業では極力果粉が取れないように注意しなければなりません。

病虫害

ブルーベリーは他の果樹と比較すると病虫害が少ないと言われます。無農薬での栽培も可能ですが、そのためには十分な管理が必要です。主な病害として、灰色かび病、マミーベリー、さび病(図7)、アルタナリアリーフスポットなどがあります(図8)。

ハイブッシュブルーベリー 図7 さび病 イメージ画像
図7 さび病
ハイブッシュブルーベリー 図8 アルタナリアリーフスポット イメージ画像
図8 アルタナリアリーフスポット

また、主な害虫として、コガネムシ類(図9)、ハマキムシ類、ケムシ類(図10)、カイガラムシ類(図11)、オウトウショウジョウバエ、ゴマダラカミキリ、コウモリガ、ミノムシ類などがあります。
いずれの病虫害においても、発生を低減させるためには、剪定により樹冠内の風通しを良くすること、適切な雑草管理や落葉落枝、花がら、障害果を園地外へ搬出し、園地内を清潔に維持することが重要です。 ウイルス病の発生もみられますが、ウイルス病の詳細は「ブルーベリーのウイルス病」をご覧ください。

ハイブッシュブルーベリー 図9 マメコガネ イメージ画像
図9 マメコガネ
ハイブッシュブルーベリー 図10 イラガ イメージ画像
図10 イラガ
ハイブッシュブルーベリー 図10 イラガ イメージ画像 ハイブッシュブルーベリー 図10 イラガ イメージ画像
図11 カイガラムシ

気象災害

ハイブッシュブルーベリーの植栽地には、冬季の寒さが厳しく、積雪の多い地域もあります。凍害は、厳冬期よりも厳冬期を過ぎ気温が上昇し始めてから発生する場合が多いです。凍害にあった枝は茶褐色になり、花芽を切断し内部を観察すると、乾燥した状態になっています。このような枝は、春を迎えても発芽しないので、剪定時には除去します。積雪の多い地域では雪害もみられます。積雪が50cmを超えるような地域では、雪囲い作業が必須です。樹の中心付近に丈夫な支柱を立て、縄で枝を支柱に巻き付けます(図12)。ブルーベリーは浅根性のため、干害も発生しやすいです。夏場に1週間ほど降雨がない場合、新梢の先端部が萎れて垂れ下がります(図13)。また、水分不足は果実肥大を抑制します。このような場合は灌水する必要があります。また、十分な有機物マルチを施している場合は、干害対策にもなります。一方で果実の成熟期は梅雨期にあたるため降雨が多い場合、果実が裂果することもあります(図14)。適度な風は葉の光合成を促進することが知られています。しかし、強風の場合は、開花期にはミツバチの行動が抑制され、結実や果実肥大に悪影響を与えますし、果実がある程度肥大した時期以降では、果房ごと落下することもあります。このように強風地域では、防風ネットや防風林による対策が必要です。水田転換畑でブルーベリーを栽培する事例がみられますが、この時、湿害が問題の一つになります。水田跡地では排水不良な場合が多いので、高畝に加え、暗渠など何らかの排水対策が必要になります。

ハイブッシュブルーベリー 図12 縄による結束 イメージ画像
図12 縄による結束
ハイブッシュブルーベリー 図13 乾燥による新梢先端部の萎れ イメージ画像
図13 乾燥による新梢先端部の萎れ
ハイブッシュブルーベリー 図14 果実の裂果 イメージ画像
図14 果実の裂果


寄稿者

岩手大学農学部附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター
助教 渡邉 学

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