以前から不景気になると実の成る木が持てはやされると言われ、ここ数年野菜、果樹が注目されています。エコブームもあり消費者の価値基準が変化したものと思います。
私は、長い間鉢物栽培に携わり1984年ブルーベリーを中心に実物植物の試作を開始しました。1999年苗木生産、販売を始めました。ブルーベリーの多面的機能により観光摘み取り、ジャム、ソース等加工品も開発しました。
今回は、鉢物栽培について記したいと思います。
栃木県大田原地方は年平均気温が13.0℃、最高気温18.0℃、最低気温8.8℃、積算降水量1723mmの火山灰黒木土壌で水田転作園です。
平成16年に「栃木県なかがわ水遊園」(年間25万人の来園者)の隣接地に那須ブルーベリーガーデンを開設しました。品種見本園を作り一般消費者に数々の品種の中から自分好みの品種選定が出来るように常設の栽培圃場を作りました。合わせて摘み取りが出来る体験教室も行っています。
安全で食味品質の優れた果実の生産は有機栽培の徹底を図り、身体にハンディーのある人々への配慮として、車椅子生活者が容易に摘み取りを楽しめるような樹形の開発や園内バリアフリー整備は那須国際医療福祉大学と共同作業により120cm〜50cmの結果枝を利用、小さな子供達にも喜ばれています。
ブルーベリーに限らず鉢物の条件は、栽培し易い事が第一と思います。
鉢物を買って下さった消費者の方々が難しい植物ではマニアの方ならどんな条件でも克服するでしょうが、一般の方は日持ちのしない物に次はありません。ブルーベリーは土壌条件が非常に難しい植物です。ツツジ科、スノキ属、シアノコカス節、落葉低木で残根ヒゲ根ですから栽培土壌により栽培適用範囲が非常に狭いため特にハイブッシュ種は品種を上手に選定しなければなりません。
しかし、鉢栽培なら土壌条件を人工的に変える栽培方です。植物の栽培環境に合った土壌条件や環境条件を変えながら栽培できます。お客様の消費形態で、鉢サイズ、樹姿に合わせた品種の選定等、思惑どうりになるのが鉢物栽培の最大の利点です。
私は、ラビットアイ種の数品種とハイブッシュ種の3品種を選定しました。
地球温暖化の影響を直接受けるブルーベリーはますます栽培条件が狭くなりました。3年前に栽培していたハイブッシュ種は東京のお客様には進められなくなりました。
特に夏冷涼な地域は別として都会の夜間温度ではハイブッシュ種は栽培困難な品種が多くなりました。
都会での条件として見逃せないのが光があります。ベランダ栽培でも屋上での栽培でも畑と違い光はごく限られた範囲で栽培しなければなりません。栽培試験の結果光が十分当たらない所では、ラビットアイ種が良い様です、花芽の数に問題があっても剪定により花芽数を制限しなければならないのが果樹の剪定技術です。
人工的に調整の出来ない温度と光以外はブルーベリー種に合わせコントロール出来る技術開発が必要です。
ハイブッシュブルーベリーの栽培用土はPHが低い(4.8〜5.3)保水性があり排水性に富む用土を作らなければなりません。ベースは赤玉土、ピートモスですが、両方とも産地により素材の条件に違いが有り、ブレンドの仕方が変わります。
表1 ピートモスの原産地別性状
原産地/調査項目 | 生成 | PH | EC | 含空気孔隙率(%) |
---|---|---|---|---|
カナダ産 | SP | 4.5 | 0.11 | 22 |
フィンランド産 | SP+Sr | 3.9 | 0.19 | 35 |
スウェーデン産 | SP+Sr | 3.8 | 0.17 | 31 |
ラトビア産 | SP | 4.3 | 0.06 | 30 |
表2 赤玉土の採取地別粒団特性
調査項目 | 土の色 | 水中振謄後の粒径別残存率(%) | ||
---|---|---|---|---|
採取地 | >7mm | >2mm | >0.6mm | |
鹿沼市赤塚 | 暗褐色 | 28 | 62 | 30 |
今市市町谷 | 茶褐色 | 7 | 50 | 30 |
宇都宮市瓦谷町 | 茶褐色 | 5 | 46 | 33 |
南那須町八ヶ代 | 淡褐色 | 1 | 8 | 13 |
用土分析 (有)峰岸植物栽培研究所
以上の事からピートモスは北欧産、赤玉土は鹿沼市赤塚産の暗褐色硬質の物を使用するとよいです。
表3 選定した用土の理化学性
EC | PH | 含空気孔隙率 | N-NH4 | N-NO3 | P2O5 | K2O | CaO |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0.4 | 4.8 | 28.0 | 3.0 | 23.0 | 2.0 | 120.0 | 13.0 |
果実品質に優れ超大粒種で風味の良さはハイブッシュ種1番である。しかし土壌適応性の巾の狭さはこれも1番なのかもしれません、鉢植え栽培なら土壌管理が敵節であれば良く生育し大きくて美味しい果実が収穫出来ます。早生の品種で収穫が6月(関東)に終了するため収穫後の花芽形成までに樹性の回復に時間が取れるため安定した収量が見込まれる、根が弱いのはラビットアイ台の接ぎ木を利用すると良い。
樹性が強く、果実の香り、糖酸比に優れ甘く食感が良い、オーストラリアで選抜された品種と言われ夏の暑さにも耐える品種、樹の形が整いやすく、鉢でも庭でも良く成長し都会での栽培に優れた品種、花芽が付きやすくベランダでも作りやすい。
北部ハイブッシュ種として分類されているが南部ハイブッシュ種の性質を強く持つ品種で、暖地でも栽培可能な強健な品種です。果実の風味、甘み、輸送性、貯蔵性に優れるが樹性の強さから結果枝が強く伸びすぎる傾向がある、鉢物の形を整えるのが一工夫しなければならない。
ラビットアイ種は数品種栽培していますが、土壌、灌水量、共に気を使うことはありませんが、樹性が強いため樹の形を整えるために肥培管理に注意、剪定では樹を抑えることが出来ないため、出荷ローテーションの組み方に注意、鉢サイズにより品種も替えなければなりません。
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<相談・指導に応じられる分野と内容>
1,ブルーベリーの鉢物栽培に関する事項
2,ブルーベリーの土と肥料に関する事項
3,栃木県型接ぎ木技術に関する事項
4,剪定講習会(ハイブッシュ種、ラビットアイ種)に関する事項